第2章 Sylpeedを導入しよう

 では、あなたのPCでSylpheedを使えるようにしましょう。

ここでは、Sylpheedのインストールと初期設定について説明します。また、バージョンアップする方法についても取り上げます。

なお、導入方法については「Sylpheedユーザーズマニュアル」にも詳しい情報があります。本ドキュメントで取り上げなかった情報については、そちらをご覧下さい。

・Sylpheedユーザーズマニュアル

http://y-imai.good-day.net/sylpheed/manual/sylpheed.html

Sylpheedがありませんか?

 まず最初に、すでにSylpheedが導入済みかどうかを確認しましょう。

 Sylpheedは、Red HatやDebian・Vine・TurboLinuxなど多くのディストリビューションに収録されています。もしかすると、インストールは必要ないかもしれません。これは各ディストリビューションの資料で確認できます。

 また、使用しているOSでKDEやGNOMEなどのデスクトップ環境が使えるなら、メニューをたどってSylpheedを探してみましょう。

 たとえばKDEでは、次の位置で見つかります。

  KDEメニュー→[インターネット]→[Sylpheed]

 すでにSylpheedが導入されているなら、「Sylpheedを初期設定する」に進みましょう。

Sylpheedが使えるか

 Sylpheedは、Linuxだけでなく多くのOS上で動作します。ここでは、必要な動作環境を確認しましょう。


  Sylpheedの動作に必要な環境

 Sylpheedは、軽快な動作を特徴とするソフトウェアです。元々の開発が、次のような性能のPCで行われていたので、これ以上の性能であれば快適に使用できるでしょう。

・CPU----- Pentium 166MHz

・メモリ --- 64MB

 KDE3やGNOMEなどのデスクトップ環境が動作するPCであれば、十分な性能があります。なお、sylpheedの動作速度は、保存しているメッセージとメモリサイズによっても違ってきます。1つのフォルダに数千通を越えるメッセージを保存していると、動作が遅くなります。

 Sylpheedを実行するには、次のソフトウェア環境が必要です。

動作に必要なソフトウェア環境

・Linuxあるいは他のPOSIX 準拠なUnix like OS

・GTK+ 1.2.6以降

・X Window System対応のウィンドウマネージャー

 (KDE、GNOMEなどの統合ウィンドウ環境に含まれている)

・GnuPG/GPGME(暗号化/電子署名で使用)

 「GTK」は、Linuxなどでグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を実現するためのライブラリソフトウェアです。これは、Linuxなどで人気の高いグラフィックツールGIMPのために開発されました。そのため、GIMPを収録しているディストリビューションでは、GTKも収録しているでしょう。GTKのバージョンは、Sylpheedを起動して確認することもできます。


  動作確認されている環境

 Sylpheedは、多くのOS上で動作します。現在、Linuxの他、次のOSで動作が確認されています。

Sylpheedが動作するOS

BSD系

・FreeBSD

・NetBSD

・OpenBSD

・BSD/OS

商用UNIX

・Solaris

・AIX

・IRIX

・HP-UX

・Tru64 Unix

その他

・Mac OS X 10.3 + X11 for Mac OS X

・Windows(開発中)

・QNX(開発中)

 動作確認されているOSは、次のSypheed公式サイトで公開されています。このリストは、随時更新されています。自分の使いたい環境があるか、ここで確認しましょう。

 「Sylpheed日本語公式サイト」

 http://sylpheed.good-day.net/index.cgi.ja

Sypheedをインストールする

 Sylpheedをインストールしましょう。ここでは、代表的なインストール方法を取り上げます。


  インストール方法を確認する

 Linuxなどでアプリケーションをインストールするには、まずディストリビューションと「パッケージ管理システム」を確認します。

 パッケージ管理システムは、Linuxなどでアプリケーションをインストールしたりバージョンアップするための仕組みです。これを使うと、簡単な操作でアプリケーションをインストールできます。

 Linuxでは、ディストリビューションやパッケージ管理システムによって導入方法が違っています。Sylpheedを導入するため、あらかじめ自分の使っているディストリビューションとパッケージ管理システムを確認しておきましょう。

 代表的なパッケージ管理の形式に、次のものがあります。

 ・rpm形式---Red HatやVineで使用している

 ・deb形式---Debian GNU/Linuxで使用している

 ここでは、コマンドラインからパッケージ管理システムを呼び出す方法を説明します。また、パッケージ管理システムを介さずに、コマンドラインから直接インストールすることもできます。


  rpm形式で導入する

 まず、rpm形式のパッケージ管理システムで、Sylpheedを導入する手順を解説します。

●導入済みかrpmコマンドで確認する

 rpm形式のパッケージ管理システムで、sylpheedがインストールされているか調べるには、次のコマンドを実行します。

  $ rpm -qa | grep sylpheed

 Sypheedに関する情報が表示されれば、インストールされていることになります。

●Sylpheedをダウンロードする

 rpm形式のSylpheedファイルは、次のサイトで配布されています。

  http://y-imai.good-day.net/sylpheed/

 ここから、次のファイルをダウンロードしましょう。

  sylpheed-0.9.7.i386.rpm

       ↑バージョン番号

 このファイルは、インストールの際に自動解凍されるので、解凍作業は不要です。

●Sylpheedをインストールする

 Sylpheedをインストールするには、次のコマンドを実行します。途中で入力するパスワードは、PCの管理者(root)のパスワードです。

  $ su

  Password: (パスワードを入力)

  # rpm --install sylpheed-0.9.7.i386.rpm

 これで、Sylpheedがインストールできました。

●Sylpheedをバージョンアップする

 rpm形式では、特別なバージョンアップ手順はありません。最新版のSylpheedをダウンロードして先ほどのインストール手順を実行すると、自動的にバージョンアップされます。

●Sylpheedをアンインストールする

 Sylpheedをアンインストールするには、次のコマンドを実行します。

  $ su

  Password: (パスワードを入力)

  # rpm -e sylpheed-0.9.7.i386.rpm


  Debian GNU/Linuxの場合

 続いて、Debian GNU/Linuxのdeb形式のパッケージ管理システムで、Sylpheedを導入する手順を解説します。

●導入済みか確認する

 Debian GNU/Linuxでsylpheedがインストールされているかを調べるには、次のコマンドを実行します。

  $ dpkg -l sylpheed

 Sypheedに関する情報が表示されれば、インストールされていることになります。

●Sylpheedをインストールする

 Debian GNU/Linuxのwoody以降を使っているなら、次のコマンドでインストールできます。途中で入力するパスワードは、PCの管理者 root)のパスワードです。

  $ su

  Password: (パスワードを入力)

  # apt-get update

  # apt-get install sylpheed

 このとき、自動的に必要なファイルのダウンロードと解凍が行われます。

 Sylpheedがダウンロードされない場合は、ダウンロードする場所を

/etc/apt/sources.listファイルに指定します。この情報は、Sylpheedのメーリングリストなどで確認してください。

●Sylpheedをバージョンアップする

 deb形式でバージョンアップするには、次のコマンドを実行します。途中で入力するパスワードは、PCの管理者(root)のパスワードです。

  $ su

  Password: (パスワードを入力)

  # apt-get update

  # apt-get upgrade

 このとき、自動的に必要なファイルのダウンロードと解凍が行われます。

●Sylpheedをアンインストールする

 Sylpheedをアンインストールするには、次のコマンドを実行します。

  $ su

  Password: (パスワードを入力)

  # apt-get remove sylpheed


  コマンドラインの場合

 パッケージ管理システムが不明だったり対応していない場合には、コマンドラインからコマンドを実行して、ソースコードをコンパイルの上インストールします。手順としては、それほど複雑ではありません。

 この場合は、OSのパッケージ管理システムを利用できません。

●whichコマンドで確認する

 whichコマンドは、実行プログラムがどこに置いてあるかを調べるコマンドです。次のコマンドを実行してみましょう。

  $ which sylpheed

 sylpheedが置いてある場所が表示されれば、インストールされていることになります。

●Sylpheedをダウンロードする

  まず、Sylpheedのプログラムファイルをインターネット経由でダウンロードします。Sylpheedは次のサイトで配布されています。

  「Sylpheed公式サイト」

  http://sylpheed.good-day.net/index.cgi.ja

 Linux用のファイルは、lzh形式やzip形式ではなく、tar.gz形式かtar.bz2形式で圧縮されているのが一般的です。公式サイトからこの形式のファイルをダウンロードしましょう。

●ダウンロードファイルを解凍する

 ダウンロードしたファイルは、次のコマンドで解凍します。

  $ tar zxf sylpheed-0.9.7.tar.gz

      ↑  バージョン番号

Sylpheedをコンパイルしてインストールする

 ファイルを解凍したら、次のコマンドを順番に実行します。途中で入力するパスワードは、PCの管理者(root)のパスワードです。

  $ cd sylpheed-0.9.7

  $ ./configure

  $ make

  $ su

  Password: (パスワード入力)

  # make install

Sylpheedをバージョンアップする

 特別なバージョンアップ手順はありません。先ほどのインストール手順を実行すると、自動的に上書きインストールされます。

Sylpheedをアンインストールする

 Sylpheedをアンインストールするには、次のコマンドを実行します。

  $ su

  Password: (パスワード入力)

  # make uninstall

 手動でアンインストールする場合は、次のディレクトリ以下を削除します。

  /usr/local/share/sylpheed/

  /usr/local/share/locale/ja/LC_MESSAGES/sylpheed.mo

  /usr/local/bin/sylpheed

Sylpheedを使い始める

 Sylpheedがインストールできたら、早速起動してみましょう。インターネットでメールをやり取りするには、あらかじめいくつかの設定が必要です。Sylpheedは、最初の起動時に必要な情報を問い合わせてくるので、それらを設定します。

 また、バージョン番号も確認してみましょう。


  必要な情報

 まずは、メールに必要な情報を確認しておきましょう。Sylpheedでメールを扱うには、次の情報を設定します。

・サーバに接続するための情報

・個人情報

・アカウント

・メールボックス

●サーバに接続するための情報

 「メールサーバ」は、あなたのためにインターネット経由でメールを送受信してくれるコンピュータです。あなたのPCがインターネットに接続していないとき、代わりにメールを送受信してくれます。いわば、メールのポストです。あなたは、自分のPCからインターネット経由でこの「メールサーバ」に接続します。

 そのためには、あらかじめメールサーバにあなたの情報を登録してもらいます。そして、この「サーバ情報」をSylpheedにも設定します。登録する情報には、次の項目があります。

Sylpheedに登録するサーバ情報

登録項目

設定例

プロトコル

POP3、POP3(APOP認証)、IMAP4、NNTP

受信サーバアドレス

pop.***.example.net

送信サーバアドレス

smtp.***.example.net

メールサーバのユーザーID

foo

メールサーバのパスワード

xxxxxxxx

メールアドレス

foo.example.net

 これらの情報は、企業用のPCであれば、IT担当者が把握しているでしょう。個人ユーザーのPCでは、利用しているインターネットプロバイダやメールサービスで確認できます。

●個人情報

 個人情報には、あなたの名前と所属している組織名を設定できます。これらの情報は、メールと一緒に送られます。

Sylpheedに登録する個人情報

登録項目

設定例

名前

風野 軽太

組織

シルフィード産業

●アカウント

 Sylpheedでは、サーバ情報と個人情報を「アカウント」という名前で管理します。そして、このアカウントを複数組持つことができます。

 最初は、1つだけアカウントを作ります。これは「Account1」となりますが、2つ目、3つ目と作成していくと「Account2」、「Account3」というように末尾の数字が増えていきます。これらを「アカウント名」と呼びます。アカウント名には、好きな名前を付けることができますが、英数字で付けるのがいいでしょう。

 複数のメールアドレスを使い分けたり、複数のメールサーバに接続する場合に、いくつものアカウントを使い分けます。

サーバ情報個人情報を管理する名前

アカウント名--→ Account1(初期設定)

●メールボックスの名称

 「メールボックス」は、Sylpheedがメール情報を保管するところです。初期設定では、自動的に「Mail」という名前になり、同じ名前のディレクトリがホームディレクトリに作られます。違う名前を付けるときは、英数字にしておきましょう。

メールを保存する場所の名前

メールボックス名--→ Mail(初期設定)

 Sylpheedのメールボックスは、アカウント(サーバ情報個人情報)を独立して設定できます。1つのメールボックスで、複数のアカウントのメッセージを保存したり、複数のメールボックスと複数のアカウントを組み合わせることができます。

 最初は、単純に1つだけメールボックスがあればいいでしょう。

●初期設定の手順

 Sylpheedを初めて起動すると、次のステップで初期設定が始まります。

Sylpheedを起動する

メールボックスを設定する

アカウントの情報を設定する

Sylpheed スタート


  Sylpheedを起動する

 では、Sylpheedを起動します。KDEでSylpheedを起動するには、次のように操作します。

  KDEメニュー→[インターネット]→[Sylpheed]

KDEメニューからSylpheedを呼び出す


210.png

 この手順は、ディストリビューションやデスクトップ環境によって違っている場合もあります。

 コマンドラインから起動するには、次のコマンドを実行します。

  $ sylpheed

 Sylpheedを初めて起動したときには、自動的に初期設定が始まります。


  Sylpheedを初期設定する

 ここでは、Sylpheedをはじめて起動したときに、自動的に始まる初期設定の手順を説明します。

●必要な情報を入力する

 Sylpheedを初めて起動するときには、初期設定を行います。自動的に初期設定のウィンドウが開くので、必要な情報を入力します。

①「メールボックスの設定」ダイアログボックスが表示されるので、[OK]ボタンをクリックする

メールボックスを設定する


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②続いて「新規アカウントの設定」ダイアログボックスが表示されるので、個人情報とサーバ情報を設定する

③「新規アカウントの設定」ダイアログボックスの[OK]ボタンをクリックする

個人情報とサーバ情報を設定する


212A.png

212.png

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④「アカウントの編集ダイアログ」に「Account1」が追加されるので、[閉じる]ボタンをクリックする

Account1」が追加された


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 これで、Sylpheedが起動します。左側には、メールボックス(メール箱)が表示されています。右下に、アカウント名が表示されています。

Sylpheedが起動した


215.png

215A.png

 この初期設定では、次の項目は特に変更する必要はありません。あらかじめ入力されていた値のままとしました。

・メールボックスーーーー mail

・アカウントーーーーーー Account1


  バージョンを確認する

 Sylpheedのバージョンを確認するには、次のように操作します。

①メニューから[ヘルプ(H)]→[このプログラムについてを選択する

②「このプログラムについて」ダイアログボックスが表示されたら、バージョン情報を確認する

[OK]ボタンをクリックする

Sylpheedのバージョン情報を確認する


220.png

 もしも古いバージョンが入っていた場合には、バージョンアップしておくと不具合などが解消され安心して使えます。

One Point! Sylpheedの最新バージョンは?

 Sylpheedの最新バージョンについて知るには、次のサイトにアクセスしましょう。

 ・Sylpheed日本語公式サイト

 http://sylpheed.good-day.net/


  Sylpheedを終了する

 初期設定が終わると、Sylpheedを使えるようになります。Sylheedを終了するには、次のように操作します。

①メニューから[ファイル(F)]→[終了(X)]を選択する

②「終了」ダイアログボックスが表示されたら、[OK]ボタンをクリックする

Sylpheedの終了ダイアログボックス


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 Sylpheedのウィンドウを閉じても、終了することができます。この場合は、ディストリビューションやデスクトップ環境によって操作は違っています。